医療関係者向け情報

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医療関係者向け情報 NーNOSEの開発: 基礎研究論文のリストと要約

基礎研究論文のリストと要約

C. elegans の嗅覚受容体様遺伝子は約1,200種類であり大変優れた嗅覚を持っています。広津はこれまでにC. elegansの嗅覚のメカニズムや生体シグナルの関係を明らかにしてきました。その研究論文は数多くありますがそのなかから10編を時系列に取り上げます。

2000年に世界で初めて嗅覚へのRas-MAPK経路の関与を解明し、この研究はネイチャーに掲載されました1)。その後、2005年に嗅覚順応2)、2009年に匂い走性の高精度評価3)、神経突起4)、2010年に嗅覚可塑性5)、2012年に高濃度忌避6)、2014年に匂いと受容体の関係7)など多くの研究論文を重ね、2015年にはRasの機能8)、そして同年にはヒトがん細胞の培養上清液の検体に対してC. elegansが誘引されることを発見し、それを使ったN-NOSE検査を論文発表しました9)。さらに2019年にマウスの膵臓腫瘍に対してN-NOSEが反応することを確認しました10)

広津は線虫の行動解析を世界で最も多くおこなってきた研究者です。また広津自身が発見した現象も多く、その発見のためには線虫の嗅覚解析、行動解析を高精度に行う手法の開発が必要で、それががん検査の確立に生かされました。これらの基礎研究の積み重ねにより、世界で初めての生物による検査であるN-NOSEが開発されたのです。

  • 1. 線虫の嗅覚神経に関する発見

    Ras-MAPK 経路は発生やがん化に関与するシグナル伝達経路として知られています。この論文は、このRas-MAPK 経路が驚くべきことに、嗅覚ニューロンにおいて機能しており、匂い刺激に応答して活性化されることを世界で初めて明らかにしました。さらにRAS-MAPK経路の活性化を可視化することにも成功しています。この論文は世界トップジャーナルのNatureに掲載されました。

    The Ras-MAPK pathway is important for olfaction in Caenorhabditis elegans

    Hirotsu T., Saeki S., Yamamoto M. and Iino Y.

    Nature, 404, 289-93 (2000) (peer-reviewed)

  • 2. 線虫の嗅覚順応に関する研究

    嗅覚における神経回路に依存する嗅覚順応現象の発見とともに、Ras-MAPK経路が介在ニューロンAIYの制御に関与していることを新たに明らかにしました。この現象は非常に短時間で確立するため、繊細かつ迅速な解析が必要となります。この発見により得られたノウハウは後の研究に繋がっただけでなく、がん検査の解析システムの確立にも貢献しました。

    Neural circuit-dependent odor adaptation in C. elegans is regulated by the Ras-MAPK pathway

    Hirotsu T. and Iino Y.

    Genes to Cells, 10, 517-530 (2005) (peer-reviewed)

  • 3. 線虫の匂い走性の高精度評価プロトコル

    匂い物質とC. elegansの配置を厳密に設定することにより、走性行動を高精度で検出する評価プロトコルを報告しています。このプロトコルによる解析は、がん検査における解析につながっています。

    Behavioural assay for olfactory plasticity in C. elegans

    Hirotsu T., Hayashi Y., Iwata R., Kunitomo H., Kage-Nakadai E., Kubo T., Ishihara T. and Iino Y.

    Nature Protocols, 2009, 139 (2009) (invitation) (peer-reviewed)

  • 4. 神経経路の発達の過程における神経突起の生存と除去を解明

    神経経路が発達する過程において神経突起の選択と除去は、CAM-1と呼ばれるタンパク質がWntと呼ばれるシグナル分子を検出することに依存していることを解明しました。また、神経突起の除去が正常に行われないと、嗅覚可塑性に異常をきたすこともわかりました。これらの重要な発見は、Nature姉妹紙に掲載されました。

    A trophic role for Wnt-Ror kinase signaling during developmental pruning in Caenorhabditis elegans.

    Hayashi Y., Hirotsu T., Iwata R., Kage-Nakadai E., Kunitomo H., Ishihara T., Iino Y. and Kubo T.

    Nature Neuroscience, 12, 981-987 (2009) (peer-reviewed)

  • 5. 嗅覚可塑性に関する因子を同定

    嗅覚可塑性に関する因子として線虫の密度が関与していることを明らかにしました。一か所に多くの線虫がいると、その情報がフェロモンシグナル伝達を介して行われ、線虫を拡散させます。これは走性行動の調節にも関与します。このフェロモンシグナル伝達の研究は世界トップジャーナルであるサイエンスに掲載されました。

    Olfactory plasticity is regulated by pheromonal signaling in Caenorhabditis elegans.

    Yamada K., Hirotsu T., Matsuki M., Butcher A., Tomioka M., Ishihara T., Clardy J., Kunitomo H. and Iino Y.

    Science, 329, 1647-1650 (2010) (peer-reviewed)

  • 6. 線虫の高濃度忌避の研究

    人間は同じ匂いでも濃度によって感じ方が変わることが経験的に知られています。C. elegansでも本来好きな匂い物質を高濃度にすると、嫌いになって忌避することを世界で初めて発見しました。この現象の行動戦略、神経メカニズムを明らかにした本論文は、ネイチャーの姉妹紙に掲載されました。
    がん検査の開発においては、尿の原液ではがん患者と健常人の差は見られませんでした。多くの研究者は尿中のがんの匂いが薄まっていると考え、尿を濃縮することを考えます。しかし、本研究の成果があったことから、尿中のがんの匂いが濃いために線虫が逆の反応を示したのではないかと広津は考え、尿を希釈していきました。その結果、最適濃度を発見することに成功しました。この論文なくして、がん検査の発明はありませんでした。

    Odour concentration-dependent olfactory preference change in C. elegans

    Yoshida K., *Hirotsu T., Tagawa T., Oda S., Wakabayashi T., Iino Y., and Ishihara T. * Corresponding author

    Nature Communications, 3, 739 (2012) (peer-reviewed)

  • 7. 匂いと受容体の関係を解明

    C. elegansは1200以上の嗅覚受容体を有しますが、匂いとの対応関係がわかっているのは1種類だけでした。そこで、11種の匂いに対する1200の受容体の関与を明らかにする膨大なスクリーニングを行い、高濃度のジアセチル忌避に関与する受容体SRI-14を発見しました。さらに、ジアセチルの濃度依存的な受容体の使い分けの機構を明らかにしました。この研究は2012年のネイチャー姉妹紙論文を発展させたもので、サイエンスの姉妹紙に掲載されました。この匂いと受容体の対応関係を明らかにする研究は、がんの匂いの受容体を同定することによるがん種特定検査の開発につながり、2022年のすい臓がん特定検査の実用化につながりました。

    Screening of Odor-Receptor Pairs in Caenorhabditis elegans Reveals Different Receptors for High and Low Odor Concentrations.

    Taniguchi G., Uozumi T., Kiriyama K., Kamizaki T., *Hirotsu T. * Corresponding author

    Science Signaling, 7 (323), ra39 (2014) (peer-reviewed)

  • 8. 線虫の行動におけるRasの機能を解明

    時間および細胞特異的な方法で遺伝子機能を調節する新しいRNAi法を発明しました。この方法を用いて線虫の行動におけるRasの時間、場所特異的な機能を解明しました。この発明はがん検査だけでなく線虫の生命現象の解明にも貢献します。掲載されたBMC Biologyはインパクトファクターが高いことよりプレスリリースされました。

    A role for Ras in inhibiting circular foraging behavior as revealed by a new method for time and cell-specific RNAi

    Hamakawa M., Uozumi T., Ueda N., Iino Y, *Hirotsu T. * Corresponding author

    BMC Biology, 13:6 (2015) (peer-reviewed)

  • 9. がんの匂いに対する反応の発見

    ヒトがん細胞の培養上清液に対してC. elegansが反応することを世界で初めて発見しました。さらに、がん患者の尿には誘引行動を、健常者の尿には忌避行動を示すことを発見しました。この行動は嗅覚神経を破壊すると見られないこと、がん患者の尿を与えると嗅覚神経が発火することを見出し、線虫が尿中のがんの匂いに反応することを明らかにしました。この論文では、これらの基礎研究に加えて、ヒト尿検体による臨床研究も報告されています。この論文により、線虫の嗅覚を用いた高精度、安価、簡便ながん検査ができる可能性が示唆され、その有望性から大きな反響を呼びました。

    A Highly Accurate Inclusive Cancer Screening Test Using Caenorhabditis elegans Scent Detection

    *Hirotsu T., Sonoda H., Uozumi T., Shinden Y., Mimori K., Maehara Y., Ueda N., Hamakawa M. * Corresponding author

    PLOS ONE, 10(3): e0118699 (2015) (peer-reviewed)

  • 10. マウス膵臓腫瘍での反応を確認

    HIROTSUバイオサイエンスと大阪大学の共同研究。遺伝子操作により膵がんを発症したKrasG12Dマウスの尿検体に対してN-NOSEを行ない、ヒト尿検体と同様にC. elegansが反応することがわかりました。このことよりC. elegansがヒトの膵臓がんの匂いを認識できる可能性が示唆され、後の膵臓がんの臨床研究へとつながりました。

    Application of C. elegans cancer screening test for the detection of pancreatic tumor in genetically engineered mice

    Yuji Ueda, Koichi Kawamoto, Masamitsu Konno, Kozo Noguchi, Satoru Kaifuchi, Taroh Satoh, Hidetoshi Eguchi, Yuichiro Doki, Takaaki Hirotsu, Masaki Mori and *Hideshi Ishii * Corresponding author

    Oncotarget 2019;10(52):5412-5418 (peer-reviewed)

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