「N-NOSEの陽性的中率が1%である」という科学的に絶対に説明できない数値の報道がみられます。
これは、2024年9月にPET分科会ワーキンググループが発表したN-NOSEの精度に関する調査結果を、誤った試算によって導き出したものです。
陽性的中率とは、「ある検査を受けて陽性だった人のうち実際にその病気と診断された人の割合」が定義です。
誤報では、①PET-CTをゴールドスタンダード(精度100%)と仮定する、②N-NOSEが反応するがん種を15種と仮定する、という2つの仮定をもとに試算結果を出しています。
①PET-CTをゴールドスタンダード(精度100%)と仮定する。
ワーキンググループの発表要旨には、「PET-CTをゴールドスタンダードとするならば」という仮定が出てきます。ということは、二次検査PET-CTの精度が、N-NOSEの(見かけの)陽性的中率に影響を与えることをワーキンググループも認識していることになります。N-NOSEは一次スクリーニング検査であり、二次検査、精密検査を経て、がんと診断されます。陽性的中率はがんと診断されて初めて計測できるため、その数値には、二次検査の精度も含まれてきます。
では、PET-CTはゴールドスタンダード(感度100%)でしょうか?
PET-CTの感度が100%ではないことは国立がん研究センターが報告したPET検査の感度は17.8%(Terauchi T, et al.Nucl.Med.22(5), 379-385,2008)であるとともに、PET-CTガイドライン(※①)によると、PET-CTが苦手とするがん種として、胃がん、膀胱がん、前立腺がん、腎臓がんが挙げられています(N-NOSEが得意とするがん種です)。これら4つで全がん患者の28%を占めることから、PET-CTの感度が100%であるという主張は明らかに成立し得ません。このガイドラインを作成したのはワーキンググループ自身であるため、PET-CTの感度を100%と仮定することは重大な矛盾を生じさせるものです。また、発表者の長町氏はセミナー発表において、聴衆からの「PET-CTはゴールドスタンダードではないのでは?」という指摘に、「ゴールドスタンダードではない」と回答しています。
つまり、この仮定での数字は科学的に成立しません。
※①「FDG-PETがん検診ガイドライン 第3版」2019年 PET核医学分科会 PETがん検診ワーキンググループ監修
②N-NOSEが反応するがん種を15種と仮定する
N-NOSEが15種以上のがんに反応することは、PETがん検診ワーキンググループ発表以前に、医療施設との共同臨床研究論文ですでに発表されています(A non-invasive screening method using Caenorhabditis elegans for early detection of multiple cancer types: A prospective clinical study. Hatakeyama H, et al., Biochemistry and Biophysics Reports, 2024, 39)。また科学的に、「がん種15種に反応しながら残りのがんには一切反応しない」という推測は無理があるため、
この仮定も成立しないものです。
以上の2つの仮定がともに成立して初めて、N-NOSEの陽性的中率は1%となりますが、(※2)それは科学的に成立しないものです。
皆様におかれましては、明らかに科学的に間違った誤報記事にご注意ください。
当社は、引き続き科学に真摯に向き合い、正しい科学情報を伝えてまいります。
※2
当社の研究チーム(博士号を有する研究者で構成)は、ワーキンググループが報告した「N-NOSEの見かけの陽性的中率2.09%(「PETがん検診と線虫検査に関する多施設調査」 臨床核医学, 57(5), 70-75, 2024)、国立がん研究センターが報告したPET検査の感度17.8%(Terauchi T, et al., Ann. Nucl. Med. 22(5), 379-385, 2008)をもとに、
N-NOSEの「真の」陽性的中率を 2.09% ÷ 0.178 = 11.7% と試算しました。
PET-CTの検査精度については、いくつかの論文で報告されていますが、多施設アンケート調査の集計結果ではなく、精度検証の科学的、手法的な正確性や信頼性、限界などを勘案し、国立がん研究センターの論文を引用しました。多施設横断型アンケート調査では、PET検査と並行して実施する検査が施設ごとや被検者ごとにに異なる可能性があり、データ解釈時に様々なバイアスが介入する危険性が高まります。PET検査以外の他のがん検査の受診が十分でない場合は、自動的にPET検査の感度が高くなります。一方で国立がん研究センターの論文では、国立がん研究センターがん予防・検診研究センターで実施されたPETがん検診のデータに基づき、精度評価手法を明確に設定しています。同一被験者に対して、可能な限りPET検査とほぼ同時期に「総合検診コース(臓器ごとの至適検査との組み合わせ)」を実施していることから、様々なバイアスが介入しにくい研究デザインとなっていると考えられ、公表データの信頼性が高いと判断しました。
なお、当社が引用したPET検査の論文(Terauchi T, et al., Ann. Nucl. Med. 22(5), 379-385, 2008)は英語の学術論文ですが、「多臓器を対象としたPETによるがん検診の精度評価に関する研究」という題目で、日本語の報告書もあります。
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